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★ 「妻を帽子とまちがえた男」、シューリアリズムの絵のようにかなり奇抜なタイトルです。著者は映画「レナードの朝」の原本(実話)を書いた脳神経医師、オリバー・サックスです。実際彼の患者に「妻を帽子とまちがえる」男がいたのです。そのような一見とても「奇妙」な患者さんにサックスは向き合います。人間とは、人間の認識とは、「病」とは、深く考えさせるノンフィクションです。

★ 赤いリンゴの本当の色は 本当の形は51wyst15eal__sl500_aa240_

 哲学の分野に認識論というのがありますね。たとえば赤いリンゴがあったとして、赤いリンゴも夜になれば色は分かりません。いや真っ暗であれば形さえ分かりません。闇の中で本当に赤いリンゴは存在しているのか。赤いリンゴと認識するのは、リンゴに光が反射し赤の波長の光だけを認識しているに過ぎず、赤いリンゴの真の姿は何なのだというような、ヒマなことを哲学者は考えてきました。でもいまやこのようなことは脳科学者の領分です。目で赤いリンゴを見て、それを赤いリンゴと認識するのは脳です。光そのものには色はなく赤と認識するのは脳なのです。ですから目が完全であっても脳の機能に障害があれば青いリンゴに見えたり、極端には帽子にさえ見えます。人間は目でものを見ているのではなく脳で見ているのです。現にあるものではなく脳で再構築した映像をそのものとして認識しています。ですから魚には赤いリンゴはまったく違ったものに見えるはずです。
 このように脳の障害により不思議な知覚や能力を持つ24例の患者さんが紹介されています。一つ一つが短編小説のようにおもしろいと言っては語弊がありますが、その奇妙さに驚きます。タイトルの音楽教師は人間の顔や物体が正常に認識できないのです。ですから妻も帽子に見えます。まあ靴に見えるよりはましでしょうが。頭がオルゴールになり突然音楽が聞こえだしたお婆さん、娼婦をしていたため性病となりはるか昔の少女時代に戻ってしまった女性、薬のせいで犬のように嗅覚が発達した男、「博士の愛した数式」という小川洋子の作品では脳損傷で記憶が80分しか持続しない博士が登場しましたがこのような例は実際にあります。この本にも20歳くらいまでの記憶は残っているがその後の記憶は数分しか持たない軍人が登場します。
 ほかに知能指数は60ほどで足し算はできないのに何万年先のイースターの日をピタリと当て、6桁の素数だけを瞬時に言い当てることのできる数的天才の双子、自分の足を死体から付けられた足と騒ぐ女性は自分の足を自分の足と認識できないのです。失語症であり言葉は認識できないのに人の言葉に含まれるウソは鋭く見抜く患者、にわかには信じがたい話ばかりですが紛れもない事実です。

 患者さんたちはけして精神の異常ではありません。すべて脳に器質的障害があるのです。赤いリンゴを赤いリンゴと認識できないのです。上記の例でも人間のあこがれが切ないです。オルゴールのお婆さんは、幼い頃いい思い出のなかった故国アイルランドの曲が頭に鳴り響いています。娼婦だった女性は無垢だった少女時代に戻りかわいい少女になりきっています。ふるさとの幻影に包まれ死んでいくガン患者もいます。障害のある脳はきっと失われた良き日をよみがえらせ、苦しかった人生を補償しているのでしょう。人間の悲しみが胸に迫ります。幻であってもふるさとの美しい音楽に包まれたおばあさんはきっと幸せだったでしょう。脳の絶妙な平衡感覚に驚きます。双子は「サヴァン症候群」として知られる人たちで、数を文字の数としてではなく右脳で画像として瞬時に把握していると考えられています。失語症の患者は言葉そのものは理解できなくても、声の抑揚や調子など「情感的調子(フィーリング・トーン)」を感じ取る力は失われておらず、むしろ敏感になることさえあると言われています。人間の脳は何と不思議なものなのでしょう。脳は障害があってもそれを補償し人間としてのアイデンティティを保とうと懸命に努力しているのです。脳は復元力があるのです。またある時は苦悩の追憶を消し去り至福の時を与えようとしています。もちろん誰も意識してしていることではありません。
 患者さんたちには通常感じる赤いリンゴが赤いリンゴと見えないだけなのです。その赤いリンゴは本当は青くて四角なのかも知れません。赤いリンゴはある決まった状況でそう見えるだけです。青いリンゴに見え、四角いリンゴに見えることはけして異常ではないのです。患者さんたちは赤いリンゴが見えていると思っていることでしょう。彼らの世界を尊重し、人間としてのアイデンティティを保つ手助けをしていけば彼らなりの幸せな時間を過ごすことができる、この本を読みそうおもいました。
 そして今や心の病も多くは脳の障害によるものであることがはっきりしました。社会生活を送るにはやはり赤いリンゴに見えないとまずいのは事実です。また自分は「異常」であることを自覚している人はとても辛いでしょう。器質的障害が主であれば決定的治療法もきっと発見されると思います。科学者のあくなき探求を期待して止みません。

★ 「心の傷は脳の傷」 松沢大樹東北大名誉教授

 脳の器質障害が精神に影響を及ぼすと言うことでは、2007年3月、次の記事が中日新聞に掲載されました。心の傷は脳に明らかに傷を作り、その傷はMRIなどではっきりと確認できるというものです。東北大名誉教授の松沢大樹氏の説です。新聞には傷のついた脳の断層写真も掲載されていました。ただこれについては精神科医の反論も大きなものがあるようです。もちろんわたしは精神医学も脳医学もまったくのド素人ですので判断はつきませんが、このような説もあると言うことで掲載いたします。ただわたし自身、以前は精神の病は精神的なものが主因と思っていましたが、以前記事にしました脳内物質の異常等、脳の器質的障害も大きく作用していることは現在明らかです。またド素人にとり病が治癒すればそれは真理です。この理論で治癒した人はたくさんいます。
 そして最後の「いじめは、脳を壊す。だから、いじめは犯罪行為、れっきとした傷害罪なんです」と言う言葉は全面的に同意します。 

 『東北大名誉教授の松沢大樹(80)は、かなりの数の生きている人間の脳を、その目で“見て”きた「イメージング脳科学」の権威である。
 MRI(磁気共鳴断層撮影)やPET(ポジトロン断層撮影)を用いた症例研究から、すべての精神疾患は脳内の「扁桃(へんとう)核」に生じる傷によって起きると結論づけているが、松沢によれば「深刻ないじめによっても、子どもたちの扁桃核に傷は生じている」と言うのである。傷というのは、比喩(ひゆ)ではない。本当の傷、つまり、脳にできた「穴」。「松沢の断層法」と名付けた独自の撮影方法によって、初めてその姿がとらえられた。
 現在、総合南東北病院・高次脳機能研究所(福島県郡山市)に所長として勤務する松沢によると、深刻ないじめを原因に心の不調を訴えて来院してきた子どもたちにはすべて、扁桃核の傷が認められた。その数は最近3年間で100人以上に上るという。
 扁桃核に傷がつくことで、精神疾患が起きる、とするのが松沢の説。症状から、うつ病や統合失調症と診断されたケースで、それぞれ特有の傷がみつかったが、その後、画像診断を重ねた結果、どの患者にも、両方の傷があることが明らかになったという。ただ、統合失調症より、うつ病の症状が優勢な場合には、扁桃核の傷のほか、隣接する「海馬」の萎縮も現れるとしている。
 ある少女の場合は、外国人と日本人の両親の間に生まれ、その「人並み外れた美しさ」 (松沢)のために中学、高校を通じて、いじめに遭った。15歳で発症し、自殺未遂を何度も繰り返した。断層撮影すると、やはり、うつ病と統合失調症に特有の傷が、扁桃核にそれぞれ認められた。
 扁桃核は、脳底に左右対称に二つあり、傷も必ず左右対称に現れる。扁桃核一つの大きさは親指の先ほどで直径約15ミリ。形がアーモンド(扁桃)に似ていることから、その名がついたとされるが、松沢は「ハート形をしている」という。まさに“ハート”が傷つけられているわけだ。
 そして、そうした傷は、病気の症状が消失するのと同時に消える。松沢によれば、治癒する時には、扁桃核に接する海馬にある神経幹細胞が増生し、傷を埋めたり、修復したりするそうだ。「ほとんどすべての人が適切な治療によって治癒することがわかってきている」という。
 扁桃核に傷がつく原因については、「いじめを受けるなどの要因で、脳内の神経伝達物質のドーパミンとセロトニンのバランスが崩れるせい」と松沢はみる。
 精神の安定や睡眠にかかわるセロトニンが減少し、快感や運動調節に関係するドーパミンが過剰になって毒性が現れるからではないか、とする。好き嫌いなどの情動に関係する扁桃核のことを、松沢は「愛の神経核」と呼ぶ。
 扁桃核に傷がつくと「愛が憎しみに変わる。さらに記憶認識系、意志行動系などおよそ心身のあらゆることに影響を与える」。
 近年、技術開発と研究の進化が、それまでブラックボックスだった生きている人間の脳の内部を明らかにしつつある。そして、目には見えないと思われてきた、いじめによる「心の傷」までも。
 松沢は、念を押すように繰り返
した。「いじめは、脳を壊す。だから、いじめは犯罪行為、れっきとした傷害罪なんです」 (文中敬称略)

 著書によると簡単な改善方法があります。運動と食事により欠損部分を修復することができると言うことです。もちろん外に出ることさえきつい方もおられるのでしょうが、運動は室内でもできます。食物は、セロトニンのもととなるトリプトファンを多く含むバナナ、大豆、赤身の魚など、神経幹細胞の膜を作る元となる豚肉や牛肉、牛乳も大事です。もちろん普通に野菜類をとることも大切で、タバコはよくないそうです。そして運動、日光の元が望ましいが、どのような形でも効果はあるとのことです。運動で脳に血液が送られ、神経幹細胞が増殖されます。万一直接心の病に効果なくてもこれらが一般的に心身にいいことは言うまでもありません。

★ 「妻を帽子とまちがえた男」 オリバー・サックス 著 

★ 「心の傷は脳の傷―うつ病・合失調症・認知症が治る 」 田辺功 著

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2009.11.29 / Top↑

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